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アートの歴史が語る”パンデミックと人類”の関係

 

NHK日曜美術館【疫病をこえて 人は何を描いてきたか】を見た。

歴史的にペストや天然痘など大きな疫病が発生するとアートは歴史の目撃者としての役割を果たしてきた。日本もヨーロッパもアートに描かれる悪魔はなぜかコウモリの形をしている。直感的に宿主とわかっていたのだろうか。

さて、そんな中でドイツの医者・人文学者のハルトマン・シェーデル(Hartmann Schedel, 1440-1514)が書いた「ニュルンベルク年代記」(1493年に出版)が興味深い。
本書は、聖書をもとに世界の歴史・地理に関する奇事・異聞を人文学的・学術的な年代記である。

その中に、この絵の木版画がある。

ペストの流行前は人々は熱心に宗教を信じていたが、現在と同じように人が集まると感染が広がるので、次第に神の存在を否定する者も現れる。
木版画の左端に、民衆をあおる預言者にデマを耳打ちする悪魔の姿がいる。デマの流布も現在の状況に酷似している。

次第に「ユダヤ人が井戸に毒を投げた」などといったデマが流れる。
キリストを磔にしたユダヤ人を「疫病」をもたらす元凶と決めつけて、理不尽な虐殺がなされた。

人々の不安や恐怖心が、弱いものいじめへのエネルギーに変わっていく。まるでSNSの誹謗中傷のようだ。

私は、コロナ禍で田舎から都会の様子を見ていて現在もこの異常な集合心理が働いているように思う。

我々人類の取るべく態度について考える。
科学を信じる。そして自分たちの知識で社会を動かせる政治を作り出せるはずだ。

アメリカのように自国優先や孤立主義は解決を遠のける。科学を信じず陰謀論を唱えるのはハンガリーのような独裁政治を許してしまう。世界の分断が進めば、経済の発展が弱まり、世界が停滞することになる。そうなれば想像以上の歴史的大惨事になるだろう。

一方で、人類はこのパンデミックは過去のものと同じように乗り越えられると信じたい。

国民は民主的で責任ある態度がとれれば、グローバルな連帯が強くなる。死者がでても、後から振り返ると人類の大きな進歩につながると思う。

ウイルスが人々にもたらしてくれた3つのこと。

(1) 科学技術の進歩を強力に進めること。
それに付随した医療、ウイルスの研究、食の改善が急務。

(2) 政治に対して敏感になること。
火事場泥棒のような権力拡大や税金をかすめとるようなことを許してはいけない。

(3) 最新のテクノロジーを駆使した新いグローバル経済活動を作り出すこと。
以前以上の団結ある人類になることで、必ず新しい商圏が生まれる。

政治に強制されたり、陰謀やデマに慄かされたりするのではなく、自分たちで考える。自分たちで考えた力(民度)を、政治に反映させるべき時なのだ。