わたしが出版社を買ったワケ
昨日の出版社買収の発表は、ずいぶん反響があったので背景を説明しておきたい。
コロナ世界となり、人々は外出も旅もできず 長期にわたりステイホームを強いられている。そんな中、”巣ごもり消費”(おうち時間)が増大した。ビジネスの背景には、必ず社会の需要が存在する。
1年前に、”のん”の音楽や渡辺えりの芝居のオンライン配信(Speedy Live)をはじめた。続いて電子ブック配信(Speedy Books)を世界33カ国ではじめた。いずれも、”デジタル to デジタル”が基本だったが、今年になって、出版ビジネスを本格化させることとラジオメディアに大きな可能性があると感じていた。
長期にわたる”巣ごもり”で、最初のうちは地上波テレビの再放送でさえ視聴率はあがったが、新作がないので Netflixに人気がシフトした。しかし、わたしはNetflixのリターゲティング的なユーザーインターフェイス(UI)も、終わりの始まりではないかと考えている。どんなにたくさん新作があっても、すぐに飽きるフィルターバブル構造なのだ。
巣ごもり=受動的メディアによる暇つぶし
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能動的メディアへのコミットによるアフターコロナの生き方模索
…へと人々の心境が変化している。
自分の人生をNetflixからリコメンドされるアニメ作品だけで終わらせたくない!もっと自発的でクリエーティブな自分でありたい!コロナ禍でそう考える人が多いのではないだろうか。
さて、そうはいっても日本の出版ビジネスは斜陽産業である。紙書籍は1997年の売上ピーク10,730億円から、2019年までの22年間で4,007億円減少し、6,723億円となった。4割近くも縮小している。そのうち、紙コミック書籍1665億円を除くと、紙書籍は5,058億円市場ということになる。5千億円市場って、メルカリなどフリマ市場と同程度の規模。ちっちゃ!
さらに、日本では海外と比較して書籍メディアの電子化が異常に遅れている。
そこで、歴史的には過渡期のことと思うが老舗の出版社をもつことで、著者や業界からの認知を得ることができると考えた。これで、以前より日本が誇る優れたクリエーター(著者)の知的財産を書籍化していける。
2004年に紙コミックをケータイの電子書籍化にしたいと大手出版社を口説いた時は、賛同者ゼロだったが、いまでは電子コミックはリアルを上回っている。グローバルには、電子ブックがリアル書籍を上回っているので、日本はかなり遅れてそうなるだろう。
(ちなみにその時はじめたスピーディのグループ会社であるComidiaは、いまでは日本の電子コミック制作でトップシェアを誇る!)
リアルな売り場面積(本屋さん)は減少の一途を辿っているので、できる限りIT化させることで、1冊2千部で損益がでるような構造をつくる。しかし、そこでラインナップされた書籍は、英語圏や中国語に翻訳され、世界75億人のうち40億人にアクセルできるようになる。
電子書籍だけつくっていても、ブランド(信用)がつくれない。でもリアルな出版社を持っていたら、フランクフルトのブックフェアにも堂々と出展できる。これはアートギャラリーと同じ構造で、世界はいまだに、ヴァーチャルよりリアルに価値の重きをおく。
著者からの信頼と世界で戦うためのインフラ作り、これが私が出版社を買ったワケである。
* そして、この出版社も近い将来すべて電子書籍で経営されることになるだろう。