ロン・ミュエク展へ

仕事柄、展覧会は年間かなりの数を見ていますが、「アートに興味がない人にこそ見てほしい」と本気で思える展示は、実はそう多くありません。これはその数少ないひとつ。
ロン・ミュエクは人間を驚くほどリアルに作る彫刻家。肌の血色、眉間のしわ、髪の一本一本まで本物なのに、サイズだけが現実離れしています。ベッドに横たわる全長6メートルの巨人の前に立つと、自分が小人になったような感覚に。逆に手のひらに乗りそうなほど小さな人間もいて、大きくても小さくても、そこに宿る「人間らしさ」の密度がまったく薄まらないのが彼のすごさです。
実は彼、もともとはアーティストではなく、映画やテレビの人形師。ジム・ヘンソンと組んだ『ラビリンス』などで特殊効果の人形を作っていた人です。でも映像の人形は「カメラに写る角度だけ本物に見えればいい」もの。それに飽き足らず、「どこから見ても完璧に本物の人間を作りたい」と彫刻の世界へ。デビュー作は、亡くなった自分の父親を実物より小さく再現した彫刻でした。
じゃあなぜ等身大で作らないのか。本人いわく「等身大の人間には毎日会っているから、面白くない」。サイズを狂わせることで、私たちは”人間”を初めて見るように見つめ直すことになる——彼のリアルは、そのための仕掛けなんです。
彼は約30年間で49作品しか作っていない寡作の人。日本でこの規模で見られるのは18年ぶりで、次はいつになるか分かりません。
予備知識ゼロで大丈夫。理屈より先に、体が驚く展覧会です。写真ではこのスケール感は絶対に伝わらないので、ぜひ会場で👀
場所:森美術館(六本木ヒルズ53階)
会期: 9/23(水・祝)まで











