「WeMori」の清水イアンくんと雑談: カーボンコインの可能性
地球温暖化を防ぐため森林の保護に力を入れている「WeMori」の清水イアンくんと定例ランチ。
会うたびに、お互いが新しい刺激を与え合う仲。
今回、面白かったのは、未翻訳だが、SF作家キム・スタンリー・ロビンソンによる本『The Ministry for the Future』を教えてもらった。
近未来を舞台にしたこの小説は、パリ協定に基づいて2025年にチューリッヒを拠点に設立された機関「未来省」の責任者であるメアリー・マーフィー(アイルランドの元外相がモデル)と、インドで猛暑を体験したアメリカ人フランク・メイを中心に描かれる。
地球温暖化問題は、未来の安全や繁栄を損なう脅威として設定されている。
マーフィーが、気候変動が悪化すると「通貨と市場」の安定を損なうことを中央銀行に納得させるために奔走する。具体的には、”カーボンコイン”と呼ばれる、炭素の回収と交換する割引率の高い通貨を世界的に発行することができる。
カーボンコインを増やせば増やすほど、その国の収益が上がるのだ。
実は、この発想自体、ナンセンスであり得ない話しではない。
現在、企業が二酸化炭素を決められた以上に排出するとカーボン・オフセット(炭素を埋め合わせること)するためにカーボンクレジットを購入する必要がある。
欧州連合(EU)の排出量取引は企業に参加を義務づける仕組みなのに対し、日本では企業の参加は任意で罰則もない。
例えば、ある企業が、まだどうしても設備などの理由で決められた炭素削減を行えないとする。その差を、カーボン削減している企業から1トン47ユーロとかで買う訳だ。買った企業はそれをコストとして認識し、次年度からもっとコストを減らそうとすることで、地球環境がよくなる、という仕組みなのである。
この本の中では、この排出量取引を”カーボンコイン”として流動性のある金融市場にしていこうという発想が提起されている。面白い。同じことを考えていた。
全てのマーケットは需給供給のバランスで成り立っている。むちゃくちゃカーボン減らせる企業とそうでない企業が切磋琢磨すれば、地球は早期に健康になれるかもしれない。
追伸: “カーボンコイン”が、仮想通貨のようなアイテムになれば、投資目的のマネーも入ってきて、よりカーボン削減に役立つ。また、’カーボンコイン”がデジタル所有物となれば、当事者だけでなく、購入した第三者も経費で落とすことが可能になるのではないか。現在、カーボンクレジットは損金計上されている。
JPXと経産省、排出量取引の市場開設 9月から実証実験: 日本経済新聞
The Ministry for the Future
会計処理のQ & A|カーボンオフセットフォーラム