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建築家・板坂諭【菌の器】 (Speedy Books) 発刊!


すごい本を発刊!
これからの時代は”除菌”から”加菌”が大事。
私のような昭和世代にアレルギーが少ないのも雑菌のおかげ。
むちゃくちゃ知的興奮が得られる本ですよ。
建築家・板坂諭【菌の器】 (Speedy Books)
https://amzn.asia/d/0j7lQVS8

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人間は「菌の器」である——。
関西万博でパソナ館を手がけた建築家・板坂諭さんが、人間中心の価値観をひっくり返す微生物視点からの建築・デザイン論の本だ。
私たちの身体は約37兆個の細胞と、それを上回る38兆個もの菌によって構成されている。今日何を食べたいか、誰に会いたいか、なぜ旅に出たくなるのか。その意思決定の多くは、実は体内外の菌に影響されているのではないか——。そう考えたとき、人間とは「主体」ではなく、菌が生きるための“器”にすぎないという視点が立ち上がる。
コロナ禍を経て社会は「除菌」を正義とした。しかし著者は、両手が荷物で塞がったまま建物に入ろうとした際、「除菌しない人は入れません」と警備員に制止され、結局床に荷物を置いて消毒することになった体験を通じて、その不合理さに強い違和感を覚える。清潔にするための行為が、かえって多くの菌を拡散している——この小さなエピソードが、本書の問題意識を象徴している。
本書では、椅子から実際にキノコが生えてくる「Fungi Stool/Chair」、築100年の古民家に棲みつく菌と共に再生する空間、発酵や分解をテーマにした展示やアートなど、思想を“机上”ではなく“実験”として形にしていくプロセスが描かれる。ときには、異常な猛暑のせいで展示に間に合わず、キノコが会期後に一気に生えてくるという、自然相手ならではの失敗談も正直に語られる。
発酵とは、管理と手入れによって「腐敗」を「価値」に変える行為であり、文化そのものだという視点は、建築や都市、さらにはデータ社会にまで拡張される。情報が分解されずに蓄積し続ける現代を「新たな石炭紀」にたとえる発想も刺激的だ。
日本が古来より育んできた発酵文化や八百万の神の思想も、菌という視点で読み替えられ、見えない存在と共に生きる感覚の重要性が浮かび上がる。
本書は、建築書でありながら、暮らし方・考え方そのものを静かに揺さぶる一冊だ。

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