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アートの価値とは?横尾忠則にみる需要の作り方

アートの価値ってなんだ?ってよく聞かれるが、アートの経済価値の話なら簡単に答えることができる。
アートに対して”需要”があるか、ということに尽きる。すべての経済は、需要と供給で成り立っている。それはアートに限らず仮想通貨だって一緒だ。イーロン・マスクがTwitterのプロフィール欄に bitcoin って入れるだけで需要は上がる。
アート市場は、不思議なことに新品より中古の方が経済価値が高い。新品がでるプライマリー市場(ギャラリー)よりも中古品しかないセカンダリー市場(サザビーやクリスティーズのオークション)の方が規模が大きい。
経済価値が確定したものだけが流通される。つまり、新品としてギャラリーに展示されるアートの経済価値はキュレイターやファンの絶対価値であって、流通に耐えうる価値ではないのだ。それでも一流のギャラリストは、先物やエンジェル投資家のような目利きがある。
だから、ギャラリーに行って絵を買うときに「値があがりますか?」という質問は愚問である。本当に利殖でアートを考えるなら、ギャラリーではなくオークションハウスで買わないと投資価値はない。
ちなみに、2019年度のアート年利回りは、13.6%(S&P500の年利回りが8.9%)
*アートファンドのマスターワークス社リポートより
コロナ禍でさえ、5.5%と高配当である。同期間の不動産の資産性は、マイナス1.4%である。
* Citiバンクの2020年1-7月リポート
ではギャラリー展示が勝負のアーティストはどう考えるべきか。
アーティストは、ヴォネガット流に言うと「時代を読むカナリア」である。社会の変化や状況に対して感じたことを表現できるのがアーティストなのだ。アートが社会と無縁のところにあると思っている人は、アートをもっと勉強した方がいい。
アートのクライアントは、企業ではなく社会なのだ。
自ら”需要”を作り出すことが得意なアーティストもいる。ジェフ・クーンズや村上隆がそうだ。彼らは、自らの表現と社会の接点をとらえる天才である。
“需要”を作り出し、すぐに供給できる、という点においてアートは古美術屋や物故者の作品より、いま生きているアーティストに成長余地がある。
欲しい人を作り出せると、それに価値がつく。価値がつくと値段が決まり販売される。販売されると流通する。
横尾忠則さんの展示を見に行って、そんな横尾さんなりの説明不要な”需要”の作り方に興奮した。
今回の展示は過去に横尾さんが描かれた肖像画にぜんぶマスクつけてリメイクされてる!面白い。
TADANORI YOKOO SLIP OFF SLIP WITH MASK PORTRAIT
CURRENT
2021.1.20 [wed] – 2.27 [sat]YUKIKO MIZUTANI GALLERY
https://yukikomizutani.com/exhibitions/
◆参考
春秋: 米国の作家カート・ヴォネガットはかつて講演会で、「坑内カナリア芸術論」日本経済新聞