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日本のエンタメが近代化するための民主的プロセス | 株式会社スピーディ

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日本のエンタメが近代化するための民主的プロセス

私が22歳の時、大手CM制作会社でプロダクションマネージャー(制作進行)をしていた。その会社が劇映画を制作することになり駆り出された。

宮沢りえさんの初主演作「ぼくらの七日間戦争」という映画で、私は三番目くらいの助監督(要するにパシリ)だった。

バブル時代のCM制作はいつも潤沢な予算があり、スタッフも丁寧で面白い先輩が多かった。しかし、映画制作は昔から徒弟制度と貧乏が染みついていた。東宝の砧スタジオは荒廃していた。スタジオ美術さんは昼間から一升瓶の日本酒を飲んでいて驚いた。

映画スタッフは、CMスタッフへのやっかみから、いつも非協力的だった。映画は一流でCMは三流と言われた。でも、脱いだ靴に画鋲が入れられていたことがあり、人格は三流だった。

わたしは、中学生の時に「スターウォーズ」を見て衝撃を受け映画監督になりたかった。映画の歴史の本もたくさん読んだが、大島渚監督が長い助監督時代に松竹の大船スタジオでいじめられた話を山ほど読んで、最低10年間下積みとか耐えられないなと思った。だが、当時は8ミリ出身で下積み経験のない森田芳光監督や根岸吉太郎監督、大森一樹監督など日本のヌーベルバークがやってきて、自分にも希望が持てたのである。。

でも、それから半世紀近く経ったが、日本の映画業界はちっとも変わっていなかった。映画を作る人はなぜか威張っていて、ちっともクリエーティブではない。貧すれば鈍する、である。もちろんそうでない現場もあるだろう。だが傾向として荒っぽい体質であることは間違いない。

そこへ、ハリウッドで5年前に問題となった#MeToo(2017年10月5日、「ニューヨーク・タイムズ」紙がハリウッドで影響力のあるプロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの長年の性暴力に端を発したムーブメント)が、ようやく日本にもやってきた。遅いなあ…。

根底には自分たちが特別であるという特権意識があるのではないか。そうでなければ、映画に出してやるから、自分と付き合え!などという野蛮な行為が出来るはずはない。

やれやれ、である。セクハラ、パワハラだけではない。映画やエンタメの仕事は憧れでやっているから、労働時間も待遇も普通のサラリーマンと違って当たり前と思われている。(実際、役者の低所得に対してある裁判の判決文に書いてある)日本では、好きな仕事は趣味でなければならないのか?エンタメも産業の一つである限り、普通に仕事に取り組める環境を作るべきなのだ。

21世紀のいま、映画を作るという行為は特権ではない。
誰でもiPhoneですぐ作れる。映画制作の民主化はとっくに進んでいるのだ。自分たちを特別と思うのは、その自らの才能だけにしておくべきだろう。

◆参考
“性被害映画”榊英雄監督の「性行為強要」女優から新たな告発
https://bunshun.jp/articles/-/52727

榊英雄監督の盟友、木下ほうかの「性加害」を2人の女優が告発する https://bunshun.jp/articles/-/52915

園子温監督が謝罪「今後のあり方を見直したい」…一方で性加害報道に対し反論も
https://bunshun.jp/articles/-/53352

「芸能界の性加害」水原希子のコメント全文
https://bunshun.jp/articles/-/53498

「無性に書きたくなって。」鈴木砂羽 #note
https://note.com/sawasuzuki/n/n9f158e9b878b

センシティブなシーンの撮影から俳優を守る専門家、インティマシー・コーディネーターとは  浅田智穂さんインタビュー
https://d4p.world/news/15453/