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「絵を描くことは、ある視座を得ることで、それが人間らしい行いとなる。」ゲルハルト・リヒター

 

ゲルハルト・リヒターは、ブランドテイストを持たないアーティストだ。
抽象的なものもあれば、ルービックキューブみたいな色彩のものもあれば、ピンボケ写真のようなものもある。まるでリヒターという存在がバレないように、昆虫の擬態のように、そのテイストを変化させる。
蝶は、どういうわけか同じ種類でも微妙な色や斑点の違いがある。鳥などに捕食されたとき、異端がいると生き延びることができるからだ。子孫を絶やさないようにするためには、みんなと一緒ではダメなのである。
働き蟻だけではチームは死に絶える。働き蟻が過労のときに、それまで休んでいる蟻がサポートするから、蟻は生き延びるのだ。それぞれに役割発揮がある。一つの基準で世の中を見てはいけない。
「絵を描くことは、ある視座を得ることで、それが人間らしい行いとなる。」ゲルハルト・リヒター
(Picturing things, taking a view, is what makes us human. – Gerhard Richter)
リヒターのアート作品は、生き物の多様性を表現していると思う。だから、特定のスタイルを持っていないのではないだろうか。
「ビルケナウ」の制作背景にあるリヒターの複雑な眼差しは、そんな複眼思考が反映されているように思う。
ぜひ日本初公開の作品群を見に行って欲しい。
◆参考記事
「ビルケナウ」が語るもの ゲルハルト・リヒター展
ホロコーストを描くことは可能か?――ドイツ人画家、ゲルハルト・リヒターが自作をベルリンのナショナルギャラリーに永久貸与した理由