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ビル・ゲイツの警告から考える、AIハッキング後の世界。デジタル社会の崩壊と、リアルな人間関係の信用。

ビル・ゲイツが予言した「AIが10億人の命を奪うだろう」という言葉が、いよいよ現実味を帯びてきた。連日報じられるAIハッキング騒動は、まだ泥棒の領域に過ぎない。しかし、これを映画に出てくるような劣悪なテロリストが自在に操るようになれば、飛行機、鉄道、信号、EV車——あらゆるデジタルの連鎖が攻撃にさらされ、大惨事が起きる可能性がある。
企業はAIハッカーの攻撃を受け、そこに保管された個人の口座情報や検索履歴、スマホの中のありとあらゆるデータがハックされる。企業は防戦に努め、個人は企業に金銭の補償を求めるしかない。だが、本質的な問題はそこではないのかもしれない。

AIハッカーは、デジタル上の信用で成り立っている社会そのものを崩す。初期の目的は金銭の強奪だろうが、その結果として個人の信用が失われたとき、このデジタル社会はどうやってシステムを保つのだろうか。デジタル不信に陥った社会は、個人や企業の信用情報をどこまで担保できるのか。認証する側もされる側も、どちらが本物なのかわからない。”本物そっくり”ばかりの社会。すべてが捨て垢の時代が到来してしまった。

AIハック後の時代には、パスワードも二段階認証も意味をなさなくなる。21世紀に発展したネット社会が、根底から崩れる。
沖縄には昔から「模合(もあい)」という仕組みがある。友人や同僚といった仲間同士が定期的に集まり、お金を出し合って困った仲間を助ける、独自の助け合いのシステムだ。私たちは、このようなフィジカルな信用の世界に逆戻りするのかもしれない。銀行からお金を借りるときの判断基準は、デジタルの履歴ではなく、そのコミュニティの中でその人が親切で信用に足る人物かどうかというリアルな評価になる。

AIの出現によって、ネット社会はデジタルの価値観を劇的に変えた。しかしその次は、20世紀までに培われてきた物々交換や、コミュニティの中での評判や評価が社会インフラを支える時代に逆戻りする。ネット社会は、知らない者同士を容易に繋ぐことができた。しかしAIハック時代の後には、再び「知っている者同士」の信用スコアが大事になる。
ブルーカラー・ビリオネアの時代。手で触れて感じられる存在こそが、唯一無二の価値になる。国家や企業は、デジタル上のSEOではなく、本当に人の良い人たちで構成されたサービスかどうかで判断されることになる。

ただし、この30年間のデジタル社会を完全に亡き者にすることは、到底できないだろう。だからこそ、これからのデジタルサービスには、リアルな人間の体験価値を盛り込むことが必要になる。つまり、AIを含む超デジタル社会においては、リアルとのハイブリッド運営こそが、次の時代の担い手になれるのではないか。

スペインやフランスで起きている暴動は、あってはならないことだ。しかしその根底にあるのは、デジタル社会を放置した国家に対する、見当違いではあるが人間の本能的な反発なのかもしれない。
そんなことを、ベトナムで泥風呂に入りながら考えている。

 

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