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WHO(世界保健機関): 1990年に予測した2020年! | 株式会社スピーディ

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WHO(世界保健機関): 1990年に予測した2020年!

30年前にWHO(世界保健機関)が予測した”いま”。
あまりにも的確で唸る。ぜひ読んでみてください。

政治に翻弄されるWHOだが、適正な人事、強い組織で新型コロナに対処する世界的な機関としての信頼を取り戻してほしい。

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岐阜新聞(1990年5月2日)朝刊記事

WHO温暖化の健康被害予測
病原体原虫や蚊繫殖
オゾン層破壊 免疫力の低下招く

地球温暖化は、マラリアなど伝染病の大流行をもたらし、発展途上国を中心に世界人口の半数近くが伝染病にかかる恐れがある、とする報告書を世界保健機関(WHO、中島宏事務局長)が、このほどまとめた。

報告書は伝染病の危険以外にもオゾン層の破壊による紫外線量の増加が人間の免疫力を低下させる可能性があることも初めて指摘するなど、地球環境破壊が人類に直接与える影響を総合的に予測。

健康面への悪影響を世界各国が深刻に受け止めて対策を進めるよう勧告している。最終的な報告書は夏までに完成、各国政府に送付されるほか、11月の「世界気候会議」で公表の予定で、今後の国際環境会議にも大きな影響を与えるとみられる。

「気候変化の健康影響」と題した報告書は、2020年までに摂氏8度前後と予測される気温上昇が、マラリアの病原体である原虫と原虫を媒介する蚊の双方に格好の繁殖条件を与える、と指摘した。

この結果、アフリカや南米などの感染地帯に住み、現在でも感染の危険に晒されている約21億人の間にマラリアの大流行をもたらすほか、感染地帯も拡大する恐れがある、と警告している。

マラリアのほか、寄生虫による住血吸虫症でもアフリカや東南アジアを中心に約6億人が、また蚊が媒介するデング熱でもアジア、インドなどで多数が感染する危険がある。

現在の地球上の全人口は約52億。報告書は具体的数字は示していないが、温暖化による伝染病被害だけでも世界人口の約半分にも及ぶ計算だ。

また高温、高湿状態がつづく「熱波」が高齢者や新生児、心臓秒などの循環器病障害者を直撃、死者を急増させる。さらに、温度上昇は世界の食糧生産力を不安定にし、途上国を中心に母子の栄養状態が悪化して乳幼児死亡率を上げる、とした。

このほか
(1) 海面上昇がもたらす洪水はバングラデシュなど低地国でコレラや赤痢など経口伝染病を大流行させる
(2) 害虫が繁殖、その駆除対策や食糧生産性を高めるために農薬使用量が増加、農薬汚染が深刻化する
(3) 複雑な光化学反応が起き大気汚染がひどくなる−など予想される多くの被害を列挙している。

一方、オゾン層破壊についても皮膚がんを増加させるばかりでなく、皮膚の免疫細胞を壊して免疫力を低下させ、感染症を増やす上、免疫機構が正常に働かなくなるためにワクチンも効かなくなる可能性がある、と動物実験データを基に新たな研究結果を示した。

報告書の結論と勧告要旨

WHO報告書の「結論と勧告」要旨は次の通り。
・ 地球温暖化とオゾン層破壊による影響は複雑で一地域にとどまらず広範囲に及ぶとみられる。主な健康影響は「熱ストレス」「大気汚染」「伝染病流行地域の変化」「栄養不良」「洪水」によってもたらされる。

・ 各国政府の健康政策担当官庁は気候変化が住民にどのような被害をもたらすかを明らかにするために、気候変化と健康影響との関係を総合的に検討する作業に着手すべきだ。

・(各国政府の)健康政策担当部門は、農業、気象、環境、経済計画の各部門とともに、気候変化による影響と気象変化そのものを防ぐために積極的役割を果たすべきだ。
・ 地球温暖化は動物媒介感染症の分布を変化させる可能性がある。このため、国内、国際的対策を進める必要がある。関係官庁は感染症を媒介する動物対策や予防接種、投薬治療を検討すべきだ。

・ 気候変化に伴う健康影響に対する認識を深めることが重要。各国の地域ごとに生じる健康問題を専門家だけではなく学校生徒や住民にも独自の教育資料を通じて伝えるべきだ。

・ 食糧生産力の低下による栄養不良の問題の観点から農産物の新種や新しい農業技術の開発を促進すべきだ。

説得力ある大胆な予測

解説 世界保健機関(WHO)の報告書は温暖化の主原因となる炭酸ガス規制に慎重な米国など先進国ばかりでなく、これまで気候変動へ関心が比較的薄いといわれていた発展途上国に強い衝撃を与える内容になっている。

報告書では蚊やハエなど昆虫が媒介する伝染病による「間接影響」被害を大きく見積もっている。現在マラリアの患者数はアフリカや南米を中心に全世界で約二億七千万人。WHOはこれまでマラリア対策を重点施策の一つにしてきただけに、人類の約半分が犠牲になる恐れがある、とする大胆な予測にも説得力がある。

生体を守る上で極めて重要な働きをする免疫機構に対する紫外線影響を指摘したのも大きな特徴だ。人類全体の免疫力が落ちると感染症ばかりでなく、がんなどを多発させる可能性がある。

温暖化をめぐる議論はこれまで炭酸ガス排出量を削減する対策に集中、地球の気温が上がると人間にどのような影響を与えるか、という最も重要で基本的な問題が国際会議などで取り上げられることはほとんどなかった。

世界保健機関(WHO)
1948年に発足。ジュネーブに本部があり、加盟国は約170カ国
1.保険教育
2. 伝染病に対する免疫対策
3. 風土病対策と管理
4. 食糧供給と栄養対策
5. 母子保険対策−など八つを重点施策として活動を続けている。