2年ぶりのパームデザートーー逃げるための砂漠、取り戻すための砂漠

日本から一番遠い、僕の隠れ家に2年ぶりに帰ってきた。
カリフォルニア、パームデザート。ロサンゼルスから車で2時間、砂漠の真ん中に忽然と現れるオアシスのような街だ。ここに来ると、東京で背負っているものが全部、砂の上に置き去りになる。
この一帯がなぜ特別なのか。話は1930年代のハリウッドに遡る。
当時の映画スタジオには「トゥー・アワー・ルール」という契約条項があって、スターは撮影所から2時間以内の場所に待機しなければならなかった。その距離のギリギリ外縁にあったのがパームスプリングス。
フランク・シナトラ、ボブ・ホープ、エルヴィス。彼らはここに邸宅を構え、パパラッチの届かない砂漠で羽を伸ばした。スターの保養地とは、つまり「逃げられる距離」の発明だったわけだ。
そしてこの街のすごいところは、その黄金時代の遺産が今もオシャレの源泉になっていること。スターたちが競って建てた家は、ミッドセンチュリー・モダン建築の宝庫になった。平屋のフラットルーフ、ガラス越しの山と青空、ターコイズのプール。リチャード・ノイトラやアルバート・フレイの建築が普通に街に転がっている。近年は若いクリエイターやデザイン好きがそれを再発見して、ヴィンテージ家具店やブティックホテルが次々と生まれた。ノスタルジーではなく、現役のデザインシティとして更新され続けている。
僕のヴィラはその隣街、少し大人のパームデザートにある。3ユニット6ベッドだから、家族でも仲間の合宿でも使える。プールとジャグジーに浸かって砂漠の星空を眺め、BBQで肉を焼く。それだけで一日が完結する。「砂漠のロデオドライブ」ことエル・パセオまで5分、車を20分走らせればコーチェラの会場、45分でジョシュアツリー国立公園だ。
シナトラたちは「逃げるため」にこの砂漠へ来た。僕らは「取り戻すため」に来る。
時間と、星空と、何もしない贅沢を。90年経っても、砂漠の役割は変わっていない。
Private Villa Palm Desert
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