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“お金”の歴史において過去最大規模で盗まれる暗号通貨!

 

19世紀。お金の盗難といえば、銀行強盗が最上級だった。西部劇では、強面の連中が銃を片手に覆面姿で銀行を襲った。顔バレさえなければ容易にお金を盗むことができた。屈強なワルは銀行員を脅して奪って逃げるだけ。

20世紀。金庫が近代化し、それと共にセキュリティ技術(ドアの強固さと暗号化)が飛躍的に伸びた。映画に出てくる悪者は、屈強なだけでは金庫を開けられず、理系っぽいオタクを伴っていかなければ、壁は爆破できても、金庫の暗号を破ることはできなかった。

そして、21世紀。もう銀行の窓口で覆面つけて脅かしてくる悪党はいない。そもそも銀行に現金は少なくなった。時代はインターネット。やり取りの殆どは銀行の窓口ではなく、ネットのやり取りになった。キャッシュレス社会は、銀行強盗を過去のものにした。

現在、世の中に現金貨幣は殆ど存在しない。ユーロ圏ではお金の10%しか現金は流通していない。残りは、デジタルナンバーとして銀行のパソコンが作っているのだ。どういうことかというと、あなたが借金を申し込み審査に受かると、銀行員がその数字をインプットすることでお金が作られているわけだ。

しかし、盗人はいつの時代もいるわけで、クレジットカードのスキミング被害は、世界で年間推定200-600兆円とも言われている。QRだって、偽QRに差し替えられたら簡単に盗まれる。北朝鮮が優れたハッカー国と考えるよりも、北朝鮮でも簡単に盗めるのがネット時代のセキュリティ状況と言えるだろう。現代が、人類史上一番盗難が多い時代になってしまった。

さて、本題は暗号通貨である。国が保証する法定通貨と違い民間が勝手に作ったのが暗号通貨である。国が保証していない以上、どうやってこの通貨の信用を保証するのかというと、マイナーと呼ばれる市井の人たちがデジタルデータを認証することで信用がキープされている。

だが、そもそも暗号通貨には本質的な弱点がある。

◆決済力が弱い(台帳記入に時間がかかり、貨幣の即時決済力がない)
暗号通貨は、ブロックチェーンと呼ばれる複数のブロックで作られている。そして、その通貨は台帳記入型と言って、誰が過去に利用したかを刻印していくことで、成り立っている。これが安心の源泉になっているのだが、実際は、複数のブロックの一部だけしか過去を確認していない。なぜなら、暗号通貨の流通歴史が長ければ長いほど、過去台帳の確認に時間がかかるからだ。通貨のくせに決済が遅い。これは通貨にとって致命的である。買ってすぐに決済できない。さらに言うと、ブロックの確認は、全ての確認をするわけではなく、一部のブロックを確認するだけなので、空マイニングが生じる危険性さえある。

盗んだ現金紙幣は、その製造番号が把握されていない限り、次の日に使ってもそれが盗品とわからない。現金の良さは、昨日誰が持っていたかわからないから使い勝手がいいわけである。つまり現金は、代替え可能(Fungible Token)なツールなのだ。それに対して、暗号通貨は履歴を確認し続けることで、流動性が弱く使い勝手は悪い。

だから、NFT作品を購入しても10分で決済できることもあれば、数時間かかることもあるわけだ。人気のビットコインやイーサリアムを使わず使い勝手の良い新しい暗号通貨を使えば良いという人もいるが、信用性、流通性を考えると問題があるし、そもそもブロックチェーンをベースにしている以上、過去の台帳を見にいく作業は無くならない。

 

◆安全性が低い(じゃんじゃん暗号が破られて盗まれている)
そもそも暗号通貨の歴史は盗難の歴史である。ハッカーとの戦いは、間抜け顔の覆面野郎の数百倍も厳しいものである。盗人が時間と場所を選ばないでできるいう技術進化によって、人間がマネージできる能力を遥かに超えてしまった。

先ほど、クレジットカードのスキミング被害が年々大きくなっていると指摘したが、暗号通貨だって、NFTだってハッキング被害が拡大している。どんなに暗号化されたものでも、ネットを介して解除キーをやり取りする段階で、中間者に盗難される。あのエニグマでさえイギリスの天才チームに暗号を破られたのだ。

毎日毎日、暗号通貨そのものや、NFTの盗難事件が報道されない日はない。あれっ?安全なはずじゃないの?私の中学の友人も利殖の一環でOpenses経由で購入したSandBoxの土地(約100万円相当)を何者かに盗られたが、プラットフォームは何の対処もしてくれなかったそうだ。警察に盗難届を出そうしてもNFTはデジタルアイテムに過ぎないので、所有権はないから受理されない。やれやれ。

参考
NFTマーケットプレイスOpenSeaで複数の盗難 フィッシング攻撃で被害額は2億円相当 – ITmedia NEWS
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2202/21/news069.html

 

◆信用力が無い(ハードフォークを繰り返し価値が希薄化)
暗号通貨は、あらかじめ発行限度がある、と言われている。そういう前提でないと、価値の希薄化が起きる。国の法定通貨でさえ、無限に貨幣を作り続けたら、物の価値が大混乱しインフレを引き起こし、国の信用がなくなり経済は破綻する。
ビットコイン(BTC)には、2100万枚が発行上限。4年ごとに新規発行され、2040年には新規発行がなくなると言われているが、実際は定期的にハードフォーク(仕様を変更して新バージョンを作る行為)を行い、子孫を作り続けているので価値の希薄化は進む。まるでエルサルバドルと同じである。

https://withb.co.jp/contents/13728/
https://www.coindeskjapan.com/133238/

ついでに言うと、、、

◆日本における税制が酷い
さて、暗号通貨の歴史は浅い。日本で暗号通貨を持ったまま亡くなると、遺族は二つの税金がかかる。一つは、亡くなった段階での資産価値に対して課税される。1ETH30万円で買っても、亡くなった時点での時価が!ETH100万円だったら、その時価に対して課税される。さらに、それが支払えないとなり法定通貨として販売すると、その儲けに対して所得税がかかる。ということで遺産放棄しか道はなくなる。

これらの問題点を考えると、暗号通貨やそれを前提に成立しているNFTのブームは限界がある。ただ、デジタルアートの分野は、半世紀以上前からアルスエレクトロニカのようなアートフェスがあり、以前からアート価値がある。なので、デジタルアートがなくなることはない。ただ、ベースとなっているブロックチェーンの脆弱さを理解しておいた方が良い。

まとめ
“お金”の多様性は今後、もっと必要になってくる。国の通貨も地域の地域通貨もそれぞれに用途がある。
我々人類は、暗号通貨が発明されたことで、自由に国を跨ぐ通貨の必要性を知ることができた。そのことが今後の法定通貨のデジタル化の動きを加速させてことは大きな功績と言えるだろう。

一方で、コロナ禍での世界的金余りから、株や債権への投資で物足りず投資先として暗号通貨の価値が無秩序な需要に左右され乱高下したことは、信用面での不安をもたらす結果となっているのは残念だ。また、NFTがメタと組み合わされたことで、無数の巧妙な詐欺が急増している現状を憂慮している。

ブロックチェーンに頼らない完全暗号の通貨の開発は急務である。
中央集権から分散化への流れはあって良いと思うが、もっと完全で、流動性がある完全通貨が必要なのである。

先日、暗号セキュリティのプロである中村宇利さんと対談したので、ぜひご覧くださいませ。(YouTubeとテキストあり)

◆ 追伸: ぜひ下記をご覧ください。
福田淳の対談番組『暗号貨幣から「経済の多層化」社会へ』
(ゲスト: 日本の暗号技術者、情報セキュリティ・コンサルタンント、企業家 中村 宇利)
YouTube版 ( 4エピソード)
テキスト版(前後編)