Speedy NEWS

アートにスープをかけると人類が滅びるワケ

世の中にはいろんなPRがある。
人に知ってもらう、という行為はマーケティングと呼ばれ、20世紀では最も高いコストのかかるものだった。インターネツト以前の時代は、テレビが一番効果的なマーケティング手法で、お金がないと商品も主張も多くの人に知らせることができなかった。そういう20世紀の遺物がオリンピックであり、利権化して私服を肥やす人もいたわけだ。
しかし21世紀となりインターネットが普及すると、事態は一変した。特にSNSが、個人のメディア力を大きくした。陽の当たらない話題にも世間の耳目を集められるのは良い面だが、一方で使い方を悪用すると、ロシアが米国大統領選を操作できるまでになった。
さて、ここ数ヶ月問題になっているのは、過激な環境活動家による名画への攻撃である。スープやケーキなどを投げつけ、周囲にいる人にSNSで拡散させ(マスコミを集める必要がない!)大手メディアが、それを取り上げるという構造が出来上がった。彼らのスローガンは、下記のようなのもである。
「科学的根拠に基づいた必死の訴えであり、単なる器物損壊として受け止めてはいけないと主張。天然ガスと石炭の使用停止や、少なくとも20ギガワット分の自然エネルギーへの投資という要求に政府が応じるまで “非暴力的な直接行動” を続けると表明した」環境保護団体「ラスト・ジェネレーション」(Last Generation)
「地球を破壊している人たちがいる。そのことを考えろ。芸術家たちは、地球のことを考えろと言う。だから私はこれをやったのだ」モナリサにケーキを投げた活動家。
「美しく貴重なものが目の前で壊されたらどう感じるか、地球破壊も同じことだ。」「イギリス政府が2週間内に決定した“北海油田における石油とガス採掘政策”に抗議し、“地球の生態系、そして人類を守るため”、ゴッホの名画にトマトスープをぶちまけた。」環境保護団体「JUST STOP OIL」活動家2人は、接着剤で自分たちの手を美術館の壁にくっつけるなどの暴挙に出た。
もう話し合いも、科学技術の発展もあったものではない。これらの手法は話題になっても好感が持たれないので、まるで効果がないばかりか世の中の機運を削ぐことになる。地球の未来より、彼らの発想の貧困さに絶望する。
過激な活動家の殆どが年端もいかぬ若者たちだ。私は若いから未熟で歳とってたら成熟と思っていない。だが、社会に出ると、人を説得する難しさを痛感するものだ。人は人と分かり合えないと何もできない。このことを過激活動家は分かってない。過激さは、分断を深くし問題解決を遠ざける。グレタちゃんがCOPに呼ばれなくなったのも分断の表れだろう。
為政家(世界を動かす人たち)が、「おやおや、貴重なアートを壊そうとするなら、いますぐ石油を止めんとな」とは考えない。完全にマーケティング手法が間違っているのだ。政治家や実業家を動かすのは、世論だ。消費者だ。市井の人たちの合意形成だ。だから、みんなが愛するアートに悪戯して耳目を集めようとするのは、反感こそ買え共感は得られない。
皮肉な事に、ドイツはロシアとの関係悪化からこの冬を乗り切る火力エネルギーが手に入れられない。そしてメルケル時代に原発も無くしてしまった。活動家が考える絶望の未来を、今年の冬には見ることができるだろう。気候変動で地球が地獄釜になる前に、みんな凍死してしまう。
そて、どうしたら良いのか?
第二次世界大戦で世界で唯一原爆を落とされ、震災による福島原発の爆発による被災を受けた日本は、火力発電に頼っている。世界で一番CO2を排出しない火力技術(Integrated coal Gasification Combined Cycle)を持っているが、自然エネルギーへの転換は容易ではない。だから日本は、原発を再稼働せざるを得ない。そうしないとドイツになる。いま死ぬか、将来 暑くて死ぬか。短期的には既存原発を再稼働させるしかない。
現在、日本は核融合の技術で世界をリードしている。核融合は、現行の原子力発電と安全性がまるで違う。核融合発電は2つの軽い原子核同士をぶつけて「融合」させることで熱エネルギーを生む。核廃棄物もほぼ無い、それに対して原子力発電は、ウランのような重い原子核を、2つの軽い原子核に「分裂」させることで熱エネルギーを生む。だから原子炉の中では絶えず核分裂反応が起こっているため、暴走が起こらないよう制御装置を用いて常にコントロールする必要があり、地震などで制御不能な事態がおこる。
地球温暖化が待ったなしの状況で人類は懸命に技術を開発し試行錯誤を繰り返している。日本のように海や囲まれ、火山が多い国は風車も地熱も可能性があるが、投資に見合うスピードと結果が出せるのは断然 核融合発電だろう。
実業家の成毛眞さんによれば、核融合燃料として、月の砂の中に含まれている鉱物イルメナイトの「ヘリウム3」が最も効率良いらしい。月の砂を600度以上に加熱すれば得られるが、日本の年間消費電力をまかなうのに、月の砂を毎日3000トン近くも処理しなければならず更なる技術開発が必要となる。
火力エネルギーか自然エネルギーか、などという単純な二元論で世界を見ていたら、地球の未来はない。このような技術革新は、量子コンピューターやAIの発達によって加速度的に進化している。だから、私は未来について楽観的に考えている。歴史は繰り返さない。人間がそこまで愚かなら、とっくに死に絶えているはずである。
名画にスープを引っ掛けてる暇があったら理系の大学入って科学技術を勉強してほしいものだ。
◆参考
CO2排出の少ない「日本の火力発電の技術」をアピールするべき クアッドのエネルギー担当相会合
2022.11月10日
90館余りの世界の有名美術館が10日、欧州各地で相次ぐ環境活動家による名画攻撃について共同声明を出し、生じ得る被害を「著しく過小評価している」と非難した。
2022年11月05日
スペイン・プラド美術館で、ゴヤの代表作「裸のマハ」「着衣のマハ」額縁に手を接着する環境団体「絶滅への反逆」活動家。
2022年11月4日
伊ローマの博物館パラッツォ・ボナパルテ(ボナパルト宮殿)で、ゴッホの「種まく人」に豆スープをかけ抗議する環境保護団体「ラスト・ジェネレーション」の活動家。
2022年10月14日
イギリス・ロンドンの美術館『ナショナル・ギャラリー』でゴッホの代表作「ひまわり」にトマトスープをぶっかけた2人の若者が逮捕される https://hypebeast.com/…/climate-activists-throw-soup…
2022年5月31日
仏ルーヴル美術館「モナリザ」にケーキ投げ付け、汚損未遂騒ぎ
2022年11月8日
オーストラリア国立美術館でウォーホルの代表作が青インクまみれ。環境活動家の抗議行動
武田 圭太郎、高島 保之、他59人
コメント6件
シェア1件
いいね!

コメントする
シェア