世界初のAIアート美術館が見せた未来

ロサンゼルスのダウンタウンにオープンしたばかりの「DATALAND」に行ってきた。
世界初のAIアート専門美術館。フランク・ゲーリーが設計した複合施設The Grand LAの中にあって、通りを挟んだ向かいには同じくゲーリーのウォルト・ディズニー・コンサートホールが建っている。この立地だけで、もう物語が始まっている。
手がけたのはメディアアーティストのレフィク・アナドール。MoMAに生成AI作品が収蔵された初のアーティストだ。彼が10年かけて夢見た「想像力の実験室」が、6月20日についに現実になった。
入口で渡されるのは、心拍や皮膚温を計測するリストバンドと、首にかける香りのデバイス。つまりこの美術館では、僕の身体反応そのものが作品の一部になる。
アナドールは言う。「5000年間、人間は作品を見て何かを感じてきた。では、作品が僕たちを感じ返すことはできないのか」と。
この問いの立て方が、まず素晴らしい。
5つのギャラリーを貫くこけら落とし展は「Machine Dreams: Rainforest」。
スミソニアンやコーネル鳥類学研究所などと提携し、倫理的に収集された5億枚を超える自然の画像と5万件の音声データを学習した「Large Nature Model」が、リアルタイムで映像を生成していく。84台の4Kプロジェクターが照らすデータ・パビリオンでは、巨大な花が開いてはフラクタルに溶けていく。鏡張りのインフィニティ・ルームでは、光と音と香りに包まれて、時間の感覚が完全に消えた。同じ部屋にいる数十人の感情のデータが映像を変えていくから、二度と同じ作品は現れない。文字通り「生きている美術館」だった。
僕が感動したのは、映像の美しさそのものより、その裏側にある思想だ。学習データの出所を全部開示する透明性。演算はオレゴンの低炭素データセンターで行い、一人の来場者が使うエネルギーはスマホ1回分の充電程度だという設計。AIアートへの批判が渦巻くいまだからこそ、「批判に答える建て付け」ごと作品にしてしまった。ここに、エンターテインメントの未来のひとつの解がある気がする。
美術館というより、科学実験とテーマパークと祈りの空間が混ざったような場所。日本のエンタメに関わる人は、いま観ておくべきだと思う。ダウンタウンの文化地区はブロードもMOCAも徒歩圏なので、一日かけて回るのがおすすめ。
チケットは時間指定の事前予約制です。
https://dataland.art/

















