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ブランドエクイティを高める現代アート

 

アートギャラリーを経営していると、現代アートのニーズ(需要)を考えることが多い。現代アートのニーズは劇的に増えている…のに日本ではあまり注目されていない。
まず、インテリアとしてのアートは、コロナで注目された「おうち」需要に牽引されニーズが増えた。家に人を多く呼ぶ方は、リビングが社交場のようなものなので、特に需要がある。アートは人のセンスを発揮する重要なアイテムなのだ。
大塚家具では、銀座のベッド、寝具専門店にアート作品のコラボを展開している。傘下のROLF BENZ TOKYOでも同様の試みをやっている。PARCOや西武百貨店、銀座SIXなどイケてるデパートには必ず現代アートのギャラリーが常設されているし、店舗作りでも大くのアーティストが起用されている。
さらにカフェや店舗の経営者や不動産業(デベロッパー)もアートに造詣があった方がいい。アートは場所に意味を持たせ価値をつける。三井不動産が経営するミッドタウンや森ビル開発の六本木ヒルズ内には優れた現代アートのミュージアムが存在する。
公共施設や地域の施設なんかもアイコンとしてのアートが必要だ。その場合は外に立体アートを企画することが多い。目立つし集客に役立つ。定着すれば、そのアートのお陰で不動産価値もあがる。
さらに町おこしや国際的なイベントでもアートの需要は高い。日本最大のアートは岡本太郎の「太陽の塔」だろう。1970年に開催された大阪万博のために作られ、終了と共に壊されるはすが、いまも生き残り日本そのものを代表するアイコンになっている。
以前、大手化粧品メーカーの会長が作った赤坂の迎賓館にディナーで呼ばれたことがあった。大きな立派な施設の中には会長お好みのシェフが作るキッチンもあった。が、自社の貧相なカレンダーは飾られていたが、アートは一枚もなかった!!
また、ある実業家の方が迎賓館にと買収された京都の歴史ある建物の中に、社名を冠した美術館があったが、エジプトから日本の古典まで無秩序に展示されていた。その脈絡の無さは、経営センスを疑うのに充分な酷さだった。
POLAやベネットのように経営者のアート好きが商品やサービスのブランディングになっている好例もある。POLAは「五感を研ぎ澄ませて生きる」ことを社是としている。ラグジュアリーブランドの殆どがアートとの親和性を打ち出している。単にアーティストとのコラボだけではなく、Loius Vuitton表参道にESPACEやHERMES銀座にも自社ギャラリーがある。
ブランディングの神さまで、世界で最初にCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)を名乗った元P&Gのジム・ステンゲル氏は、彼が選んだ米国上場企業S&P500の中でブランドのたつ50銘柄の株式分析では、時価総額の30%がブランド価値であると試算している。アートセンスがある経営は、驚くべき付加価値をつけることになる。
コロナ禍で、空前の金余りが続いた。いろいろな投資の中で、債権、株や不動産よりアートがいちばん利回りが高かった。2020年のアート利回りは13.6%(S&P=8.9%)だった。- MasterWork’Understanding Art as Investment’より
日本の経営者も若いテック系を中心に現代アートを買うようになった。LYちゃんやKYNE、ロッカクアヤコ、花井祐介など、二次マーケット(オークション)で凄い落札価格になっている。スタートアップから成功したテック系経営者が、アートそのものを経営の中に取り入れてブランディングしていくと、グローバルにも評価されていくだろう。経営者にブランディングとしてのアート、アートのセンスがわかる経営をもっともっと学んでほしい。
武田 圭太郎、Denis Labelle、他112人
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